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癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

世界の健康と食の安全ニュース

βアミロイド除去抗体アデュカヌマブ(Aducanumab)は 認知症の救世主?

世界には推定4,680万人のアルツハイマー認知症に代表される脳神経機能が冒された患者がいるそうです。認知症、パーキンソン病など神経細胞障害は未明な点が多いのが現状。脳神経細胞が死滅していく過程を探るのは難しい課題ですが、医学界の挑戦は続いています。最近10年は認知症治療新薬が新たに承認されることもありませんが2016年9月1日発行の「ネイチャー誌:Nature」に希望を持つことが出来そうな論文が発表され、関係者の注目を浴びています。スイス大学(University of Zurich)中心の研究者らが発表したものですが、主題は「Antibody reduces harmful brain amyloid plaques in Alzheimer's patients」(アルツハイマー患者の脳に沈着した毒性βアミロイドの塊が抗体で減少された)抗体とは合成された単一純粋抗体(*モノクローナル抗体)を指します。βアミロイドはアルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease)の主原因として知られたタンパク質。沈着が続くと脳細胞を死滅させることが知られています。この内容はすでに昨年...
トランス脂肪酸のニュースと解説

日本のマーガリンからはトランス脂肪酸がなくならない

トランス脂肪酸の有害性が認知され、世界の食品業界はその排除に真剣に取り組んでいます。1990年代よりこの問題の広報に取り組んでいたノギボタニカル。アトピー、肥満、心臓血管病など諸悪の根源と言われるトランス脂肪酸は食品業界に深く侵入しているだけに追放は容易ではありません。特にその完全な排除は低所得層を直撃するだけに、世界に先駆けてレストランなどからの追放宣言をしたニューヨーク市でさえ違反に対しペナルティーを科することに躊躇。マーガリンとトランス脂肪酸のすべて 1.禁断の実を食べ始めた日本のトランス脂肪酸対策a. マーガリンがなぜトランス脂肪追放の標的に?日本のゼロトランス機運はマーガリン業界からスタートしています。食べるプラスチックスと悪評され、トランス脂肪の含有量が加工食品中で最も多いからです。これまでは植物性油脂でマーガリンの形状を維持するにはトランス脂肪が必須でした。b. マーガリンはなぜ必要な食品なのでしょうか?マーガリンはバター不足解決の産物。19世紀中ごろに「人造バター」として開発された当初は牛脂を利用していましたから、天然のトランス脂肪以外は含有されなかったといわれます。日...
癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

アスベストによる健康被害: アスベストとラドンの結合が中皮腫発症を促進する?: 急増が予想されるアスベスト訴訟
アスベストとラドンの結合が中皮腫発症を促進する?: 急増が予想されるアスベスト訴訟

2014年10月の大阪の泉南訴訟判決では国が敗訴し、その後の建設関係判決にも影響。国が連敗しました。フォーブスのランキングに入る大手メーカー群や関連業者のほとんどが賠償倒産した米国に較べ、2桁は違うのではないかという微々たる賠償金でしたが、責任追及と訴訟は死者が増えてくるこれからが本番です。中皮腫が予想される方は早期発見、切除が唯一の治療法。また禁煙など日常生活に配慮するだけで、かなり発症を抑えられるという研究もいろいろあります。ご紹介するのはその一つ。アスベスト吸引を経験した方は放射線被曝(ひばく)が予想される場所を避けた方が良いという岡山大学の研究です。ケベック州(カナダ)のアスベスト採石場.米国、欧州が輸入禁止後も日本が輸入していた.「アスベストの健康被害」はこちらにまとめてあります.1. 岡山大学の中村栄三教授がラドンの発がん性を指摘アスベストは肺がん原因の相当部分を占めると推測されています。このアスベストによる発ガンがラドンや鉄分との結合によるのではないかとの研究が発表され話題となっています。ラジウム(ラドン)温泉で有名な鳥取県の三朝(みささ)温泉に拠点を置く、岡山大学地球地...
癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

火山灰(岩)による健康被害: ガラス質の粉塵にさらされた人が中皮腫に関して12の質問
ガラス質の粉塵にさらされた人が中皮腫に関して12の質問

御嶽山噴火は火山弾による被害が大きく、未曽有の惨事となりましたが、火山灰を吸引した被災者や火山灰影響下にある住民が注意しなければならないのは塵肺(じんぱい)、珪肺(けいはい:シリコーシス)と呼ばれる疾患。アスベストによる石綿肺(アスベストーシス)の親戚です。これらは火山岩の石英など微細なミネラル成分が肺気管の様々な場所に突き刺さることによって引き起こされますが、通常は発症までに信じられないほどの時間がかかります。定期健診で異常の早期発見が出来れば切除によって治療できますが、放置すれば治療法がありません。ケベック州ブラックレイク(black lake:カナダ)のアスベスト鉱山.ケベック州ブラックレイク(black lake:カナダ)のアスベスト鉱山展望台.鉱山を見渡す展望台は外来の入場も可.1.どのような職業に従事した人が胸膜中皮腫(mesothelioma)を注意すべき?火山岩系石材や石炭の切り出し、掘削、加工、施工などに従事した人が主としてケイ素を主体とした石英、長石などガラス質の粉塵で罹病するのが「けい肺(silicosis):塵肺」火山岩の一種が繊維状に堆積したアスベストの掘削、...
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アスベストによる健康被害: けい肺(シリコーシス:silicosis)が怖いグラスファイバー建材
けい肺(シリコーシス:silicosis)が怖いグラスファイバー建材

けい肺が怖いグラスファイバー建材アスベストの有害性が広まるに連れて、断熱材の選択に関心が集まるようになりました。住宅では屋根材、屋根下地材、壁下地材、天井材にアスベスト建材、木造の断熱材にはグラスファイバーが実績あります。ビルなどコンクリート建築関係にはロックウールが使用されますがロックウール、グラスファイバーともに、製造段階で混入する鉄分や珪素鉱物の微細な粉末がアスベスト同様、肺がんなど肺疾患を起こす危険性を無視できない素材です。グラスファイバーは繊維状に造る製品ですからアスベストより組成は大きく、その塵芥は一般的に呼吸器によって侵入を阻止するといわれますが、取り扱いが悪い場合は発癌物質となる可能性を否定できません。ケベック州(カナダ)のアスベスト採石場.米国、欧州が輸入禁止後も日本が輸入していた.1. けい肺(silicosis、シリコーシス)グラスウールなどに含まれる珪素鉱物には、けい肺とよばれる肺疾患が知られます。通常は花崗岩など火山岩(火成岩)の石材を加工する職人に多発することで知られていますが、他の職業や、2014年9月に御嶽山噴火で火山灰を吸飲した登山者など一般の人にも無...
癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

アスベストによる健康被害: 被害者訴訟で壊滅したアスベスト関連の米国大企業
被害者訴訟で壊滅したアスベスト関連の米国大企業

2005年にクボタ、ニチアス、エーアンドエーマテリアルなどによる、アスベスト中皮腫(mesothelioma)の被害者数公表は、関連業界に拡がり、大きな波紋を起こしました。これを受けて2005年7月21日には厚生労働省安全衛生部、経済産業省、石綿関係業界20団体は、石綿含有製品の代替化の一層の促進、今後の禁止規制の見直しについて検討を始めました。アスベストは1924年にはすでに危険性が指摘されていた材料。日米に限らず、多くの国は、経済の安定と成長が政府と行政の最優先課題。産業界の保護が最重要政策ですが、結局、米国のアスベスト業界は、そのつけにより、壊滅的な打撃を受け、倒産後再生したのは、体力のある国際的な大企業だけでした。ケベック州(カナダ)のアスベスト採石場.米国、欧州が輸入禁止後も日本が輸入していた.1.危険性指摘を無視しアスベスト製品製造を強行した米国産業界イタリア、ギリシャで始まったアスベスト繊維の産業は20世紀に入ると、イギリスなどを中心にその有害性が指摘されるようになりました。1924年ごろには、その因果関係を立証する診断がなされ、アスベストーシス(asbestosis)と...
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アスベストによる健康被害: フェデラル・モーグル社とティー・アンド・エヌ社の合併は陰謀か?
フェデラル・モーグル社とティー・アンド・エヌ社の合併は陰謀か?

ケベック州のアスベスト鉱山は欧米に輸出できなくなってからも、日本などアスベスト被害に無関心な国に輸出を続けていました.取材に出かけた時に観光用展望台で撮影.1.アスベスト関連企業の賠償責任日本ではアスベストによる健康被害を、立法により国が補償しようという動きがあり、物議をかもしています。欧米でもアスベスト関連企業のロビー活動により、補償制度の立法が企てられましたが、税金投入の前に関連企業が最大限の賠償をするというスタンスが勝りました。最大限ということは企業の資産を全て吐き出すということを意味します。実際にはそれでも賄えない企業がほとんどですから、民事再生法の助けをかりて、賠償を有限にする手法がほとんどになりましたが、ここでもまた問題がおきました。これが前に紹介した自動車部品の多国籍企業フェデラル・モーグル社(Federal-Mogul)の倒産。フェデラル・モーグル社は4万5千人の従業員、55億ドル(約6千億円/2003)を売り上げる多国籍自動車部品会社。倒産前の1999年には65億ドルを売り上げていました。2.フェデラル・モーグル社倒産は偽装だったのか?フェデラル・モーグル社は1998...
癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

アスベストによる健康被害: アスベストの種類とその危険性
アスベストの種類とその危険性

アスベスト(Asbestos)を使用した、断熱材、防火材、床材、塗装材などの製造過程、施工過程において、200人近くの肺がんによる死亡者が発生していたことが、2005年に大手製造会社のニチアスやクボタから公表され、物議をかもしました。日本では米国でアスベストの被害訴訟が多数に上った90年代においても、製造が続けられていました。ケベック州(カナダ)のアスベスト採石場.米国、欧州が輸入禁止後も日本が輸入していた.1.アスベスト(Asbestos)とはアスベストはマグネシウムと酸化ケイ素で成る板状、鎖状の微細な結晶で、種類は何種類かありますが、いずれも空気と共に肺に吸入されると、鋭いガラス状の結晶が細胞膜に突き刺さります。これによって引き起こされる肺がんなどは遅行性で、死亡するまでに数十年かかることもあるために、その有害性が軽視されてきました。また、アスベスト同様の建材として使用される鉱石のバーミキュライト(Vermiculite)は土壌改良剤にも使用されますが、米国などでは、バーミキュライトに含有するアスベストの危険性が指摘されており、農芸家、園芸家に警告が出されています。2.アスベストの...
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アスベストによる健康被害: アスベストは塩化ビニール(PVC)床材が怖い
アスベストは塩化ビニール(PVC)床材が怖い

一般消費者からは、アスベストがどこに存在し、どのように身を守ったらよいかという質問が多いそうです。2005年にクボタとニチアスが最初に報告したことから、屋根材と断熱材ということは理解しているようですが、他にもあるのではないか?自分の家に使用されていたらどうしよう、公的施設に使用されていたらどうしよう、などなど、疑問は多様。行政からもネットではいろいろなQ&Aが掲載されていますが、行政は生産者保護を優先してきましたから、消費者は懐疑的です。ケベック州(カナダ)のアスベスト採石場.米国、欧州が輸入禁止後も日本が輸入していた.1. アスベストの大部分は建材アスベストの有害問題は30年以上も議論されていましたが、代替品が出るまでは全ての関連産業で禁止されることがありませんでした。問題が根深いのは、代替品が現在に至るもほとんど無いことです。消費者も身を守るのが容易ではありませんが、アスベスト用途は9割が建材ですから、まず身近な住居を点検してください。近年では1980年代から90年の始めにかけての建材が最も危険。建築ブームとなったこの頃は商業建築、住宅にアスベストが非常に多く使用されています。産業...
癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

アスベストによる健康被害: 自動車部品多国籍企業フェデラル・モーグル社の倒産
自動車部品多国籍企業フェデラル・モーグル社の倒産

1. 自動車産業に波及した英米のアスベスト倒産建材業界が壊滅したのに続き、2001年10月に米国の多国籍自動車部品会社フェデラル・モーグル社(Federal-Mogul)がアスベスト賠償に耐えられず、会社再生法(チャプター・イレブン)を申請しました。建設業界と共に、アスベスト規制を遅らせていたもう一方の立役者はブレーキパッド(ディスクブレーキ用摩擦材)やガスケット(絶縁、断熱のシーリング材)を生産する自動車部品業界ですが、この倒産は、その意外性が話題になりました。フェデラル・モーグル社はアスベスト関連商品製造とは縁が薄いと思われていたからです。会社を信用していた従業員は、最盛期に1株70ドルもした株式を安くなるたびに買い進め、年金(401k)を解約してまで投資したと言われるくらいです。倒産時で従業員が株式総数の16%以上を所持しており、1株は1ドル以下になった相場に多くの悲劇が生まれました。2. 後世に警告を発したフェデラル・モーグル社の倒産フェデラル・モーグル社の倒産は、欧米、そして日本の産業界に新たな警告を出すことになりました。*子会社の責任は全て、親会社が負うことになることと、買...
癌(がん)と発癌物質のニュースと解説

癌につながる白髪発生のメカニズム: 京大西川伸一教室

2004年12月23日に「白髪発生のメカニズム」(Mechanisms of Hair Graying)という論文が電子版サイエンス誌に発表されました。主筆は米国ダナファーバーがん研究所のデーヴィッド・フィッシャー教授(David E. Fisher)。日本でもマスコミに採り上げられ、白髪防止薬を期待する論調もありましたが、防止薬の完成までには、まだまだ大きなハードルがあります。発表された研究は、白髪の原因であるメラノサイト幹細胞の自然死に関わる遺伝子解析。メラノサイト幹細胞は、悪性の皮膚がんであるメラノーマ(Melanoma)発現の原因ともなりますから、意図的な細胞増殖、修復などの操作は、皮膚がん発生の危険性に繋がります。フィッシャー教授らが、メラノーマ研究の途上で、このような発表をしたのは、地味なメラノーマの研究を、一般人向けにアピールさせる狙いかもしれません。1.白髪発生のメカニズム、メラノサイト幹細胞の自然死白髪発生のメカニズム研究は京大の西川伸一教授らが10年以上も先進していました。今回の電子版サイエンス発表の共同執筆をしたダナファーバーがん研究所の西村栄美(エミ)博士(Em...