6. 1953年:遺伝子(DNA)の螺旋(らせん)構造の発見
遺伝子(DNA)の螺旋(らせん)構造がその後ノーベル賞を受賞した米国の若き分子生物学者ジェームズ・ワトソン(James Dewey Watson)とフランシス・クリック(Francis Harry Compton Crick)らにより発見されました。
この頃より電子顕微鏡の進化など電子医療機器の進歩が追い風となり分子生物学が急進展。
(ワトソン博士がノーベル賞を受賞したのは34才頃)
7. 1971年:オロフニコフ博士がテロメアの機能を確認
テロメアの役割は細胞分裂時の染色体遺伝子転写を損傷から護ることと言われています。
人体は推定37兆個もの細胞で形成されて、毎日新陳代謝を繰り返していますが、細胞内染色体のテロメアは細胞分裂による遺伝子転写の度に損傷して短くなり、理論上は6-70回くらいで消滅(細胞死)します。
35才当時の1971年にテロメアの機能を確認していたロシアのオロフニコフ博士(Alexey Matveyevich Olovnikov:1936年生まれ) はテロメアの活性に影響する酵素(テロメラーゼ:telomerase)の存在を予言していました。
テロメア紐の保護膜を破壊し、それを短くする酵素に対して、当然のことながらそれを防ぐ酵素の存在があるという仮説です。
8. 1985年:テロメラーゼ発見と機能解明
テロメアを短縮させる老化酵素の働きを抑制する酵素テロメラーゼを発見し、(寿命を延ばしている)機能を解明したのは*3人のノーベル賞受賞者(2009年)ら。
若かった1985年ごろにテロメラーゼを発見し、オロフニコフ博士の仮説を証明しています。
テロメラーゼのように細胞核内タンパク質のヒストンを脱アセチル化する(アセチル基をはずす)酵素群は
*ヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)と総称されますが、サーチュインと名付けられた酵素を含めて心臓、脳などの人体にこれまで
18種類(HDACが11種類、Sirと命名された酵素が7種類)発見されています。
🔗 新抗がん剤開発のヒントはブドウレスベの機能解明
https://nogibotanical.com/archives/3749
(ヒストン脱アセチル化酵素の解説があります)
人類の生死を左右しているだろうテロメア(telomere)とテロメラーゼ(telomerase)の機能解明は、長寿の達成と病から解放、特に癌完治の可能性を示唆します。
🔗 2008年ノーベル医学生理学賞で示されたノーベル財団の正義: 仏米「エイズ・ウィルス発見者論争の背景」
https://nogibotanical.com/archives/2154
9. 1993年:「死を招く遺伝子」の機能低下で寿命が延びる
1993年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のケニヨン博士(Cynthia Kenyon, PhD:1954生まれ)らは線虫突然変異体の解析で、daf-2*とよばれる遺伝子の機能が低下した変異体は、原型(野生型)に比べて寿命が2-3倍近く延長することを明らかにしています。
実験に使用したのは線虫(実験生物)の一種(Caenorhabditis elegans)
ケニヨン博士はdaf-2を「the grim reaper gene」と呼んでいるそうです。
「死を招く遺伝子」と表現したいのでしょう。
*daf-2:Dauer formation 2(長寿命線虫変異体:diamino fluorescein-2 diacetate)
UCSFはノーベル賞をテロメア研究で受賞したブラックバーン博士やUCSFで学び、ロックフェラー大学(NY)でテロメア研究を続けているオランダ出身のランゲ博士(Dr.Titia de Lange:1955年生まれ)が所属する大学。
山中伸弥博士もここの研究所でIPSを発見し、現在でも研究を続けています。
🔗 細胞老化と癌(その15): 線虫が予見した長寿達成と癌制御のメカニズム: インスリン受容体と線虫の突然変異体daf
https://nogibotanical.com/archives/1327
🔗 404 NOT FOUND
https://nogibotanical.com/archives/738
10. 1999年:テロメラーゼを活性化する酵素*サーチュインの発見
テロメラーゼを活性化する酵素の*サーチュイン(sirtuins)を見出し、命名したのは*MIT大学のガレンテ博士、ハーバード大学教授の*シンクレアー博士、バイオモル社のホーウィッツ博士などハーバード大学、MITの研究者ら。
*David Andrew Sinclair (オーストラリア出身:1969年生まれ)
1999年ごろより、線虫(実験生物)の一種(Caenorhabditis elegans)による実験の場で、テロメア短縮を30%以上抑えることに成功しています。
*サーチュイン(sirtuins):silent mating type information regulation
*マサチューセッツ工科大学: Massachusetts Institute of Technology
テロメラーゼを保護、活性化する酵素群の研究は、細胞の自然死を防ぎ、長寿につながりますが、細胞を自然死させたい癌治療とも密接に関連。
🔗 長寿社会の勝ち組となるには(その33) なぜ長寿と抗がんが両立できるのか ヒストン脱アセチル化酵素の不思議
https://nogibotanical.com/archives/7385
この酵素群の発見と研究により癌や糖尿などの発現を抑制することが期待されています。
*サーチュイン(sirtuins)のSir2タイプはほとんどの生物細胞に含まれる
NAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素(*NAD+-dependent deacetylases)です。
*NAD:ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide)
ブドウ・レスベラトロールのニュースと解説 の記事一覧
- ワクチン接種義務化問題(その6) ファクターX解明に理研免疫細胞治療研究チームが糸口 東アジア人が持つ免疫細胞白血球型の「HLA-A24」
- 各国の医療財政破綻を一酸化窒素ガスが救う
- パーキンソン病と脳神経変性疾患の抑制
- MGH総合病院がCOVID-19に窒素ガス治療の治験
- パーキンソン病の抑制と改善にブドウレスベラトロール
- 長寿社会の勝ち組になるには(その42): FDAがベルビーク(Belviq)抗肥満薬の発がん性に警告 限られた専門家のみが使用すべき医薬品
- 長寿社会の勝ち組となるには(その33) なぜ長寿と抗がんが両立できるのか ヒストン脱アセチル化酵素の不思議
- 一酸化窒素合成(NO)とサイクリックジーエムピー(GMP)の産生 ブドウ・レスベラトロールとL-シトルリンのコラボレーション
- ブドウレスベラトロールが免疫細胞強化のカテリシジンを活性化
- 医療新時代を開くナイアシン(NAD+ NMN)その5: 慶応大学医学部先端科学研究所の 若返り最先端医療情報





