- 11. 2003年:サーチュイン活性化物質の発見とワイン・レスベラトロール
- 12. 2006年:カロリー制限(CR:caloric restriction)とワイン・レスベラトロール
- 13. 2008年:レスベラトロールがサーチュイン酵素を活性化し血糖値を下げる
- 14. 2008年:ハーバード大学グループの実験に疑問を持つ学者らの台頭
- 15. 2008年:合成レスベラトロールの行き詰まりとウィスコンシン大学グループの実験
- 16. 2008年:フロリダ大学・ウィスコンシン大学連合の実験方法
- 17. 2017年1月24日テレビ朝日:羽鳥慎一のモーニングショー
- 18. 2017年6月1 NHKBSプレミアム:「美と若さの新常識」
- 19. 2018年 9月2日BS-TBS:健康長寿情報番組「若返り医療最前線」を放映
11. 2003年:サーチュイン活性化物質の発見とワイン・レスベラトロール
テロメラーゼの活性化に寄与するサーチュインの活性化物質
(sirtuin activating compound:STACs)はサーチュインを発見した、ハーバード大学教授の生化学者シンクレア―博士らにより発見され、2003年に論文をサイエンス誌に発表。
この論文でSTACsの一つブドウ・レスベラトロールに特徴的なポリフェノール(スチルベン)がヒトのサーチュイン1(Sir1)酵素(Sir2と同種とも言われる)を最大限に活性化し、出芽酵母菌の寿命を延ばすことが報告されました。
この頃にはテロメア周辺の染色体構造の仕組みを明らかにする研究が盛んとなり、染色体凝縮(短縮)の酵素反応にサーチュインのSir2が重要な関連を持つことが判ってきました。
🔗 細胞老化と癌(その16): サーチュイン活性化物質スタック(STAC s)の発見
https://nogibotanical.com/archives/3706
12. 2006年:カロリー制限(CR:caloric restriction)とワイン・レスベラトロール
シンクレアー教授らがサーチュイン活性化物質の医薬品化の試行錯誤を続けている一方、断食、減食の作用を代替させる道が食品にないかと考えていたのが、ハーバード大学および国立老化研究所の新進気鋭の若い学者ケヴィン・ピアーソン(Kevin Joseph Pearson Ph.D)。
彼が主導し結集したハーバード大学、MITを中心とするボストンのグループが発表した「食べても太らない」実験結果は衝撃的で、ブドウ・レスベラトロールが脚光を浴びた最初ともなりました。
ピアーソンは老化、代謝、栄養、心臓科学の専門家ですが、ハーバード大学のシンクレアー教授らの研究等を基盤に実験を進めていました。
2006年11月ネイチャー誌に発表された論文は「ワイン・レスベラトロールは健康状態を改善し高カロリーを摂食しているマウスの寿命を延ばす」
(Resveratrol improves health and increases
survival of mice on a high-calorie diet)
細胞内の抗老化酵素(サーチュイン:sirtuins)は低カロリー食同様に、ワイン・レスベラトロール(resveratrol)によっても活性化することがピアーソン博士の遺伝子レベル(genome-wide transcriptional profiles)の実験で証明されました。
13. 2008年:レスベラトロールがサーチュイン酵素を活性化し血糖値を下げる
2008年1月8日のウォールストリート・ジャーナル電子版はレスベラトロールによる糖尿病治療薬実験の進展を伝えました。
記事はモルガン・チェース(J.P. Morgan Chase & Co)が後援する、投資家を対象とした会議で発表されたレポートです。
レスベラトロールの効能を人間の実験において確認した最初の報告です。
2006年に行われた実験は98名の糖尿病患者を対象におこなわれ、67名には、レスベラトロールの治験薬(SRT501)を投与、31名には偽薬(プラセボ)を投与しました。
第一段階は僅か28日間の投与でしたが、SRT501に顕著な血糖値低下の効能が認められ、プラセボ投与者には何の変化も見られませんでした。
結果が経口ブドウ糖負荷実験(oral glucose-tolerance test)での血糖値低下に限られ、血漿ブドウ糖値(plasma glucose levels)を下げなかったことが特筆されています。
実験を主導したのは長寿の研究で知られるハーバード大学医学部のデービット・シンクレアー教授と教授が創設者の一人となっているベンチャー企業のサートリス社でした。
(この件は1万件を超える報道がありましたが、同じ6月に大手製薬会社のグラクソスミスクラインによるサートリス社買収が終結しています。
買収金額は開発途上の研究会社としては異例の約800億円でした)
*5年後にグラクソスミスクライン社は合成レスベラトロールの副作用問題が解決できず、医薬品開発は暗礁に乗り上げています。
14. 2008年:ハーバード大学グループの実験に疑問を持つ学者らの台頭
レスベラトロール研究は過熱していましたが、この騒ぎに疑問を呈する学者達からの研究が目に付くようになったのも2008年。
オーストラリアの大学よりハーバード大学の教授に転進してきた若いシンクレア―教授らの、医薬品開発やベンチャー企業設立の拙速姿勢に違和感があったとも言われます。
合成レスベラトロールを大量に投与するボストン近郊のグループの実験に対し、合成レスベラトロールに疑問を呈しているグループは
「レスベラトロールは赤ワインの効能からスタートしている。ガンならともかく、糖尿病、心臓障害などに大容量の合成品が必要なのだろうか?」
「2型糖尿病の医薬品開発ならば副作用が全く無い医薬品が求められる。血糖値を下げるだけならば、これまでの医薬品で充分である。
新薬は副作用が無いことが大前提」
「合成レスベラトロールの大量投与は安全性が立証できない」などなどです。
天然レスベラトロールには優れた血糖降下作用がありましたが、反面、高濃度の医薬品として合成レスベラトロールを投与した場合はグルコトランスポーター1型(GLUT1)が大量に存在する脳、網膜(retina)、胎盤(placenta)、赤血球などに作用して、組織が必要とする糖分まで低下させる危険性を示唆しています。
15. 2008年:合成レスベラトロールの行き詰まりとウィスコンシン大学グループの実験
副作用による合成レスベラトロールの行き詰まりとともに、ボストングループの実験に疑義を持った米国厚生省のサポートを基に、かねてより地道な疫学調査を続けていた、ウィスコンシン大学グループが天然のブドウ・レスベラトロールを使用した研究で大きな成果を挙げたことが報道され、全米で大きな反響を呼びました。
実験のポイントは少量のレスベラトロールで長寿、肥満防止に大きな効果があること。
ウィスコンシン大学グループはサーチュインに関心が高いフロリダ大学と協調して研究を進めていました。
フロリダ大学、ウィスコンシン大学の共同研究が解明したのは、カロリーを40%制限することで得られる長寿、老化防止の経路とレスベラトロールがサーチュイン酵素を活性化させる経路とが同じであったことでした。
🔗 「羽鳥慎一のモーニングショー」
https://nogibotanical.com/archives/3736
(参照)
米ウィスコンシン大学は、生後間もない80匹以上のアカゲザル(Macaca mulatta:ニホンザルに酷似)を28年間(2017年現在)も飼育し続け、通常の食餌と30%減の食餌に分けた、グループ比較テストを現在も続けています。
減食アカゲザルの優性結果を立証し、飢餓によるサーチュイン活性化の疫学的証明をした最大拠点です。
反対勢力によりボストン・グループの旗色が悪くなった時期も、ぶれずに独自にカロリー・リストリクションの有用性を信じ続けた姿勢は、世界の専門機関や研究者から高く評価されています。
サルの飼育による実験は飼育専門家が必要となる困難で大掛かりな実験となりますが、老化抑制、癌、心臓病など多くの疾病予防に様々な有用データを得ており、幾つものインパクトのある論文を発表しています。
ブドウ糖は断食により8時間で全て枯渇するため、ブドウ糖の代替として肝臓で脂肪酸が燃焼するときには脳にエネルギー源を供給するためのケトン体(Ketone bodies:アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸)が作られます。
ケトン体は骨格筋や心臓や腎臓や脳など多くの臓器に運ばれ、これらの細胞のミトコンドリアで代謝されブドウ糖に代わるエネルギー源として利用されます。
特に脳にとってはブドウ糖に代わる必須、唯一のエネルギー源です。
健康人の断食はサーチュイン活性化により免疫細胞を活性化、血管老化の抑制、遺伝子損傷の修復など老化防止に様々なメリットがありますが、腎臓病、心臓病、糖尿病などで栄養状態が悪い高齢者の断食は危険が伴うといわれます。
この実験はこの記事18項のNHKBSプレミアム 【美と若さの新常識】(2017年6月1日放送)でも紹介されました。
16. 2008年:フロリダ大学・ウィスコンシン大学連合の実験方法
実験結果のポイントは「現実に近い分量のレスベラトロールの投与で肥満防止と長寿に貢献できる」というものです。
グループの実験ターゲットは「レスベラトロール成分によって心臓、筋肉、脳の、どの遺伝子が老化過程スイッチのオンオフに影響を与えているかを観察する」ことでした。
実験結果は少量の天然ブドウ・レスベラトロールの投与が、カロリー制限と同様に、寿命に関する遺伝子経路(the same master genetic pathways related to aging)に働き、肥満と心臓病を防げる、これにより生活の質を高め、長寿が達成できる、というシンプルなものですが、遺伝子レベルで説明されたことがポイントです。
例を挙げれば、心臓だけで寿命に関与する遺伝子は1029もあるそうですが、ラットの実験では食事制限により90%の遺伝子の老化を遅らすことが確認されていますが、少量の天然レスベラトロールの服用では92%の遺伝子が老化しませんでした。
17. 2017年1月24日テレビ朝日:羽鳥慎一のモーニングショー
🔗 「羽鳥慎一のモーニングショー」
https://nogibotanical.com/archives/3736
18. 2017年6月1 NHKBSプレミアム:「美と若さの新常識」
(放映時のテレビ局のコピー)
断食は体質改善のスイッチ 若返りの強い味方サーチュイン遺伝子
断食はダイエットのためにあらず、体質改善のスイッチがオンになるスゴイ効用があるらしい。
月1回断食をするモルモン教徒に驚きの効果
「断食の健康効果」は数値で測りにくいことから、これまで科学の研究の対象にならなかった。
ところが、2011年に米国心臓病学会で宗教上の理由から毎月断食をするモルモン教徒の研究が発表された。
米国ユタ州は人口の6割をモルモン教徒が占める。
彼らは毎月最初の日曜日( Latter-Day Saints :LDS)に、24時間、水以外は口にしない断食を行う。
そこで、モルモン教徒と同じ町に暮らす一般住民との病気の発症率を比べてみると、モルモン教徒は心臓病の発症率が39%、糖尿病は52%も低いことがわかった。
19. 2018年 9月2日BS-TBS:健康長寿情報番組「若返り医療最前線」を放映
🔗 医療新時代を開くナイアシン(NAD+ NMN)その5:
https://nogibotanical.com/archives/1318
健康長寿達成のキーワードを紹介
慢性炎症、
AGE、
テロメア、
サーチュイン遺伝子、
プラズマローゲン、
SB623
🔗 腎疾患と老化を促進するAGEと異性化糖
https://nogibotanical.com/archives/822
(参考)
サーチュイン
ブドウ・レスベラトロールのニュースと解説 の記事一覧
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