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感染症の海外ニュースと解説

感染症の海外ニュースと解説

世界マラリアの日(World Malaria Day)と ヨモギ(クソニンジン)のマラリア特効薬アーテスネート(artesunate:アルテミシニン)

クソニンジン(Chinese wormwood :Qing Hao:Artemisia annua L)クソニンジンのヨモギパワー(アルテミシニン)がマラリア退治毛沢東の523プロジェクトでノーベル賞を受賞した屠呦呦(Tu youyou)博士が発見*屠呦呦:トゥーユーユー 1.世界マラリアの日(World Malaria Day)毎年4月25日は国連の世界マラリアの日。世界では106ヶ国、33億人がマラリア感染の危機に直面。感染者総数推定2億1,000万人、推定627,000人が死亡しています(2012年:WHO)。世界マラリアの日は2001年にスタートしたアフリカ・マラリアの日を2007年に世界規模に変身させたもの。アフリカ諸国及びマラリア撲滅に指導的な地位にある世界保健機構(WHO)は2004年のマラリア撲滅キャンペーンでは安価なヨモギで作られたアーテスネート(アルテスネート)などのアルテミシニン(アルテミンシン)治療法を徹底するよう訴え、以後約10年間で推定330万人の命を救ったといわれます。この数字は死亡率ではアフリカで49%減、世界では42%減にあたるそうです。2.アフリカ・...
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マーズ対策に生きるサーズの教訓: ステロイドホルモンによる骨壊死にご注意

サウジアラビア発の中東呼吸器症候群(マーズ:MERS:Middle East respiratory syndrome )は重症急性呼吸器症候群(サーズ:SARS)の兄弟。感染者、死者が1週間で3倍増近くなり韓国の政治経済に大きな打撃を与えていますが、サーズに対処をしてきた体験、対処法を活かせば日本では恐れることはありません。マーズはスペイン風邪、香港風邪、ロシア風邪とも親戚ですから先人が日常的に対処してきた知恵から多くの対策を学べます。現在インフルエンザと呼ばれる伝統的な呼吸器感染症が最初に拡大したときは2,000万人以上が死亡し、まさにパンデミック。マーズの比ではありませんでした。日本は小さな島国であり防疫体制も整っています。国民も伝染性のある感染症には敏感ですから韓国発で蔓延する危険性は少ないといえますが、韓国系居住者が多く、交流が頻繁なだけに防疫にはそれなりの覚悟が必要でしょう。そこで参考になるのがサーズ流行時の北米大陸の先例。 2015年ノーベル賞:屠呦呦(Tu youyou)博士の発見したマラリア特効薬アルテミシニン1.サーズを運んだ北米大陸の中国系移民2003年頃の北米大...
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サーズ劇症肺炎の背景は「食在広州」: 身近になった人獣共通の劇症肺炎

アジアでサーズと呼ばれる新種肺炎が話題となったのは2003年。中国発の原因不明劇症肺炎として世界の注目を集めました。この肺炎は当初原因が特定できなかったため、重症急性呼吸器症候群サーズ(SARS:Severe Acute Respiratory Syndrome)と呼ばれていましたが、流行収束後、別途命名されることはありませんでした。2012年にサウジアラビアで流行し2015年5月までに400人以上が死亡した中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome :MERS)はサーズと同じコロナウィルスを原因とする劇症肺炎。MERS(マーズ)はサーズの兄弟ともいえるコロナウィルスですが中東から韓国に飛び火して話題となっています。かっては動物を宿主としている未明のウィルスは風土病として限られた地域で人感染が見られる程度でしたが、伝染性の高いウィルスに変異して人人感染が珍しくない時代となったようです。 1.サーズ(Severe Acute Respiratory Syndrome)の発生最初の発生地、中国広州(広東省)からヴェトナム(ハノイ)、香港、中国(広州)...
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増え続けるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と肺炎球菌感染症

慢性気管支炎、肺気腫などと呼ばれていた肺疾患がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と総称されるようになったのは2000年代ごろから。喫煙が主原因とされていますが、急成長する発展途上国都市部では大気汚染も大きな原因と考えられています。COPDは重症化した場合に治療法がほとんどありません。1.COPD(慢性閉塞性肺疾患)が流行させる新型インフルエンザ今年(2014年シーズン)のインフルエンザ流行は例年より早く始まりました。最近はワクチン接種が普及したのと、タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤による初期段階での封じ込めが功を奏し、インフルエンザが重篤化することが少なくなりましたが、児童の脳炎、健康弱者の肺炎は相変わらず減りませせん。鳥インフルエンザH5N1などの変異による発生が予想される新型インフルエンザは、拡大するとすれば要因として呼吸器関連疾患を持つ人たちの急増が挙げられます。世界の保健当局が懸念するのはこの点です。喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで免疫力が弱まっている時が最も新型インフルエンザ・ウィルスに抵抗力がない時と考えるべきでしょう。COPDのほとんどが自覚症状の軽い潜在患者であるが...
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株価が急騰したエボラ出血熱ワクチン開発企業: キー(鍵)はNIHのサリバン博士

10月23日のニューヨークタイムスはギニアより帰国したクレイグ・スペンサー医師がエボラ出血熱に感染しベルビュー中央病院(Bellevue Hospital Center) に隔離中と伝えました。大都会ニューヨークは大騒ぎ。「国境なき医師団」に加盟しての活動は評価できますが、21日間といわれる潜伏の可能性がある期間は人の集まるところ、地下鉄など公共交通機関は避けるのが常識。若い(33歳)からでしょうが医師としての見識を疑われます。こんなこともあり、エボラ・ワクチン開発ベンチャーの株価が急騰。1.エボラ出血熱(ebola hemorrhagic fever)流行の始まりエボラ出血熱の最初の流行(epidemic)は1976年頃に推定人口3,800万人のスーダン(Sudan)と推定人口約6,700万人のザイール(Zaire:現コンゴ共和国:Democratic Republic of Congo)で記録されています。エボラの名前はスーダンのエボラ河由来。その後1995年の流行時にはスーダンで300人以上が死亡しましたが、以来途絶えていたそうです。エボラ出血熱は1976年に流行してから今回の大...
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エボラ出血熱の2次感染者発生に米国民はパニック状態

1.エボラ出血熱の2次感染者発生に米国民がパニック状態エボラ出血熱の2次感染が現実となった米国ではその対応を巡ってヒステリックというかパニックというか冷静さを欠いた議論が始まっています。「防疫対策に不備があるのでは?」「これまで何人かの感染者を治療した2か所の病院では2次感染が無かった」「なぜ経験の浅いダラスの長老派病院にエボラ感染者を収容したのか」「全米でも対応できる病院は4ヶ所しかないはず」「なぜ2次感染した看護師を一般航空機に乗せたのか」「病院関係者は一般人と接触すべきでない」などなど。世界保健機構(WHO)を代表して感染症対策を常にリードしてきた米国政府機関のCDC (Centers for Disease Control)。その対応が非難、批判される状態では、全面的に世界保健機構に頼っている日本など諸外国はより不安が募ります。非難の主対象はリベリアから帰国した感染患者の診断ミスをした上に2次感染看護師を二人も出したダラスの病院と、対応の相談に乗っていたCDC。1次感染者や2次感染者を禁足しないで多くの人に接触させていますから接触した人ばかりでなく近隣もパニック状態。連日メディ...
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エボラ出血熱の次は致死率90%のマーブルグ出血熱?: 資源開発が招く風土病の感染拡大化

西アフリカでエボラ出血熱が短期間これまで10年間の感染例、死者を上回る死者2,000人を超えるブレイク(2014年9月初)をして騒ぎとなっていますが、同じ西アフリカにはエボラの親戚ともいえるマーブルグ出血熱(Marburg haemorrhagic fever)があります。マーブルグ出血熱はエボラ出血熱と同じフィロウィルス科(Filoviridae)。1967年にウィルスが最初に同定されたのが大学都市のマーブルグ市(ドイツ)。以来、その名がついていますが、アフリカの風土病といえる人獣共通感染症。コウモリ、サルなどから感染すると考えられています。エボラ出血熱と同様に散発的に発生すると考えられていましたが2005年に西アフリカ南部のアンゴラ共和国(República de Angola)ウィジェ州(Uige)でブレイクした事例以来、汚染地のケニア、コンゴ、南アフリカなど関係各国は警戒を強めています。日本では1類感染症に指定されています。アンゴラ共和国は16世紀から19世紀に南米やカリブ海沿岸諸国へ奴隷を300万人以上も供給した国。人口は約2,100万人。近年は内乱と独立戦争が絶えず、国土は...
世界の健康と食の安全ニュース

デング熱から身を護る: 殺虫剤の生態系破壊に日米の思想相違が

精油が蚊の忌避剤(repellent)となるレモンユーカリ(Lemon Eucaly:Corymbia citriodora)(オークランド動物園:NZ)デング熱脳炎騒動は関係者によれば大陸や熱帯の感染症へ日本人が関心を持つようになった良い機会だったそうです。デング熱脳炎は遺伝子型にもよりますが、発症程度は免疫力、抵抗力により様々。医療機関の世話にならない軽症や全く発症しない人がたくさんいます。デング熱脳炎の知識が普及していなかったために、すでに症状不顕在の感染者が全国にウィルスをまき散らしてしまった可能性を否定できません。定着する(していた)可能性が高くなりましたから、蚊の駆除と、刺されない工夫がすべての国民に必要な状態となりました。デング熱はやや症状が重くなる3型が世界各国で急増中といわれますが、蚊が媒介するウェストナイルウィルス対策に注力する米国の防御策は色々な意味で世界をリードしています。感染症に負けない体づくり.免疫力強化には天然のブドウレスベラトロールが最適.(この記事の商品写真は2014年8月にテキサス州ヒューストン在のサルバトーレ松波さんが取材したものです)。1.米国と...
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フランスを悩ます蚊が媒介するチクングニア熱: 仏領レユニオン島のパンデミック

WHOの蚊撲滅キャンペーン・シンボル1.フランスが恐れるチクングニア・ウィルスの強毒性変異2006年に鳥インフルエンザが広がり始めた頃、フランスはもう一つの感染症に悩まされていました。それはアフリカ南部のフランス領レユニオン島(La Réunion)に蔓延していたチクングニア熱。蚊が媒介するトガウィルス科です。知名度の高い蚊が媒介するフィラビウィルス科はデング熱、ウェストナイルウィルス、日本脳炎を紹介しましたが、もう一つのトガウィルス科はフィラビウィルス科に分類する学者がいるほど類似性、共通点を持ちます。 チクングニア熱はフランスからは遠隔地アフリカ南部の風土病。致死率が低かったために、話題になることが多くはありませんでした。2006年のブレイクでは致死率が高くなり死亡者が増え始めたのと、パリなどフランス本土に帰国した国民の一部が感染していることがわかり、強毒性変異かと騒ぎが広がりました。世論にせかされたドミニク・ド・ ヴィルパン首相(Mr Dominique de Villepin)は現地を視察。レユニオン島の破滅的なパンデミック(大流行)を救済するために救援軍隊を派遣。総額110億...
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アメリカを悩ますダニ由来のライム病: 温帯地域はダニ、シラミ、ノミによる感染症が要注意

1.ダニ、シラミ、ノミによる感染症5月から10月の温帯地域は蚊や蚤(ノミ)、虱(シラミ)、ダニが活躍するシーズン。ダニに関しては野外のSFTSV(マダニ・ウィルス)による重症熱性血小板減少症候群が日本でも有名になりましたが、世界の温帯地域にはダニ、シラミ、ノミによる感染症が少なくありません。特にげっ歯類や犬猫、鹿などの小動物と接する人はダニや蚤(ノミ)、虱(シラミ)が媒介する感染症の危険にさらされます。アメリカを悩ますダニ感染症で代表的なのがライム病(Lyme disease:Borrelia burgdorferi)。病原性微生物が緩やかな螺旋をもつスピロヘータ科の微生物ですが、同科には他にも有名な梅毒、ピンタ、回帰熱、ワイル病などがあります。ワイル病(Weil:Leptospira interrogans)はスピロヘータ科レプトスピラ属 (Leptospira)。かって日本の著名な医学研究者野口英世博士が黄熱病の同類と判定したほど性格が似ています。黄熱病は蚊が媒介するデング熱同様のフラビウィルス科の感染症です。2.米国CDCがライム病の増加に警告2007年6月17日に米国厚生省傘下...
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エボラ出血熱感染者をタバコのニコチンが救う?: 西アフリカのブレイクに未承認血清を試験使用

若者に蔓延する脱法ドラッグ、危険ドラッグ吸飲による犯罪急増で植物アルカロイドの功罪が話題となっていますが、今度はナス科タバコ(Nicotiana tabacum)のニコチン・アルカロイドが善玉として脚光を浴びています。ニコチンといえば習慣性があり中毒を連想する悪玉アルカロイドの代表ですが西アフリカでブレイクしているエボラ出血熱(Ebola virus)の抗体療法に試験使用され大きな成果を収めたようです。血清を使用したのはエボラに現地感染。急遽帰国後にアトランタで治療中の米国人男女の医者と助手。エボラ出血熱は1976年に発見されてからの35年間で確認されている死者が1,600人くらい。感染症としてはごくマイナーでした。それが、今回のエボラ出血熱ブレイクは1年足らずの短期間で感染者1,800人弱。死者はすでに1,000人を超え、致死率が6割強。(*2014年9月末は感染者が7,000人を超え、死亡者は4,000人弱.毎月ごとに倍増していますから6か月以内に100万人を超えると予想されています)これまでは接触感染、飛沫感染が主のようで、感染地域もアフリカに限定されていますが現場で活動していた...
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スペイン風邪ウィルスで実験された新型インフルエンザA(H5N1)対策

1.米国CDCの鳥インフルエンザ・ウィルス情報インフルエンザのシーズンとなり、いつもながら新型インフルエンザ発生が現実味を増しますが、米国厚生省(HSS)の疾病管理予防センター(CDC)から、2007年2月1日に二つのニュースが発表されました。                             一つはA(H5N1)など新型インフルエンザの大流行(パンデミック)もウィルスの持つ酵素をわずかな遺伝子操作するだけで、大きな効果が得られたという研究。この研究はタブーとされてきたスペイン風邪ウィルス(H1N1)を使用した実験を疾病管理予防センター(CDC)が許可したことが特徴的。2007年2月5日のサイエンス誌に掲載された研究は、動物実験の段階でしたが、即効性と経済的な効果のある防疫法となる可能性を持っていると評価されました。                                      もう一つはインドネシア、イギリス、日本などで蔓延した鳥インフルエンザ・ウィルスが渡り鳥を介して米国に侵入する恐れがあること。人感染するウィルスに変異している可能性があるために、全国的な警戒態勢...
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新型豚インフルエンザは人造ウィルス?(Prof.Adrian Gibbs)

1. 新型インフルエンザが、なぜメキシコで発生?オーストラリアの科学者ギブス氏とマスコミとのインタビューが波紋を起こしています。2009年5月11日のインタビュー内容は「メキシカン・豚インフルエンザは人為的なもの」:ウィルスは実験室で造られた?「典型的な実験室人造ウィルス(a typical lab made artificial design porcine influenza virus)」というものです。ポーサイン(porcine influenza)はスワイン(swine flu)と同様に豚インフルエンザを意味します。新型インフルエンザがなぜメキシコから? なぜA(H1N1)?なぜメキシコ人の死者が圧倒的に多い?という疑問を持つ関係者は少なくありません。ギブス氏(Adrian Gibbs)は75歳。引退してオーストラリア在住。現役時代はタミフルやリレンザのオセタミヴィル(oseltamivir) 、ザナミヴィル(Zanamivir)開発に主導的な役割をはたしました。ギブス氏の発言にはバイオテロとの言及はなく、研究途上のミスとの見解。発言は正式なものではなく、細かな立証データが公...